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電子教科書(狭義)とは

紙媒体の教科書の内容(コンテンツ)を電子化し、デスクトップパソコン、ノートパソコンやタブレット型端末、その他の情報端末で閲覧できるようにしたもの(データ)。デジタル教科書とよばれることも。

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教科書と教材

教科書には大きく義務教育課程での検定教科書と、大学や専門学校などで教師が指定する指定教科書とがある。前者はそれをデジタル化したからといってそのままで電子教科書になるわけではない。「検定」のステップを踏んでいないから。一方大学の講義で指定教科書を使う割合は年々低下しており、教員手作りの教材(パワーポイントの投影など)で授業が行われるのが半ば当たり前になっている(大学や学部によるばらつきがかなりあるが)。

義務教育過程で現在流布する電子教科書はだから、正確には「教科書」ではないという意味で、「教材」の範疇に属することになる。そして教科書か(副)教材かは、無償配布の対象となるかや、作成のための著作権料の高低と関係することになる。

逆に大学ではすでに教材の電子化が既定事実化している、といえる。

電子教科書とデジタル教科書

2009年11月、当時の原口総務大臣が原口ビジョンとして「一人一台のデジタル教科書の導入」に言及したことをきっかけに、教科書出版社による「教師用指導書」のデジタル化が進んだが、原口総務大臣が「デジタル教科書」の語を選択したことから小中高等学校の分野で使われるのは「デジタル教科書」が一般的になった。文部科学省も「デジタル教科書」を使う。かつ、当時電子黒板の普及が徐々に進んでいたことから、電子黒板と連動した教師用教科書(指導書)が「デジタル教科書」の語義・内容として定着した経緯がある。
日本 デジタル教科書 電子教科書https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/05/日本 デジタル教科書 電子教科書2-300x165.jpg 300w" sizes="(max-width: 843px) 100vw, 843px" />

一方大学では、先行する海外の大学でeTextbookのほうが使用例が比較的多かったせいか「電子教科書」の名称のほうが普及している。これは一般書のデジタル化で、 「digital book」 より 「e-book」のほうがアップルのアプリストアでのiBooksの名称からの連想からか普及したことが背景にあると考えられる(もっとも海外でも作り手側、つまり出版業界では作業工程のデジタル化が先行した歴史から、「DigitalBookWorld(またはFair)」などdigitlの単語が目立つ)。
世界 デジタルブック イーブックhttps://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/05/世界 デジタルブック イーブック1-300x165.jpg 300w" sizes="(max-width: 847px) 100vw, 847px" />

標準化

新しい製品、商品が社会に普及していく過程で標準化が鍵となることがある。小中高等学校の分野で使われる「デジタル教科書」はまず教師用として教科書出版社がスタートさせたところから、国内標準かつデファクト標準がまず目指されたが、2013年あたりから国際標準かつデジュール標準へ大きくそして急速に舵が切られようとしている。しかし「教科書」の定義が実は広範囲に及ぶ事情もあり、まだまだその必要性の認識は薄い。

大学では出版社が刊行した書籍を教科書として使うことがそもそも廃れる傾向にあり、組織だった「教科書のデジタル化」検討の動きはほとんどない。そのためたとえば、数式や化学式をベクターグラフィクスの標準技術の SVG(Scalable Vector Graphics)を応用するかどうかなど、小中高等学校の教科書関係者(研究者や出版社)が共有している議論などが、大学向け教科書の供給側である専門書出版社ではほとんど知られていない。電子教科書の仕様標準化の検討にはほとんど関心がない状況が続いている。

(修正経緯:望月 陽一郎氏の指摘 2015年5月5日)


○いわゆるデジタル教科書は、「デジタル機器や情報端末向けの教材のうち、既存の教科書内容と、それを閲覧するためのソフトウェアに加え、編集、移動、追加、削除などの基本機能を備えるの」であり、主に教員が電子黒板等により子供たちに提示して指導するためのデジタル教科書(以「指導者用デジタル教科書」という。)と、主に子供たちが個々の情報端末で学習するためのデジタル科書(以下「学習者用デジタル教科書」という。)に大別される。現在、教科書発行者から発行されているのは、いずれも指導者用デジタル教科書である。また、これは教科書に準拠しているものの、法上は、教科書とは別の教材に位置付けられる。

出典:●学習者用デジタル教科書・教材の開発 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/04/11/1346505_06.pdf


◇関連クリップ
●デジタル教科書100のQ&A【基本編】 http://bit.ly/1DPRsMm
●学習者用デジタル教科書・教材の開発 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/04/11/1346505_06.pdf
●デジタル教科書コンテンツにおける紙面素材と活動ツールの分離 http://js-dt.jp/_userdata/journal/journal01_JSDT.pdf
●デジタル教科書の最新動向 http://www.cccties.org/wp/wp-content/uploads/2015/04/20150314_02.pdf
●デジタル教科書と電子黒板の現状と標準化への提言~標準化分科会まとめ~ http://www2.japet.or.jp/3project/iwb_teigen/iwb_teigen20150128.pdf
現状について、良くまとまっている。また標準化への参考になる情報として貴重。日本教育工学振興会(JAPET)(現 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC))の活動成果。