オスマン帝国におけるワクフ運用

市場経済と社会的福祉との融合は、国家の経済政策を超えて、社会のなかに組み込まれていた。それを示すのが、ワクフ(イスラーム的寄進)制度である。

ワクフ制度において、ワクフ施設(モスクや学校などの宗教慈善施設)は市場(スーク)の店舗など、ワクフ物件の賃貸によって生み出された利益によって建設・維持された。

そのため、ワクフ物件は、通常、土地や建物の不動産であった。動産でも書籍などはワクフ物件となしえたが、現金は原則、ワクフ物件とはされなかった。その賃貸によって生み出される利益がリバー(利子)と解されたからである。

ところが、オスマン帝国では、多くの現金のワクフ設定がみられた。官僚主義と並んで、こうした柔軟さがオスマン帝国統治の特徴であった。

参考文献:
興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫)』  林佳代子(講談社、2016年)

■関連知識カード/章説明他:
リバー その1
リバー その2
ワクフ


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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