「互酬」を基本とした社会

またドイツ中世史家の阿部謹也は、ポランニーの互酬概念ではないものの、それに近似のモ-スの贈与の概念に依拠して、ドイツ初期中世社会の互酬的性格を強調した。*

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第6章:宗教・第4節:経済統合システムとしてのワクフ制度  加藤博(東京大学出版会、1995年)
ヨーロッパ中世の宇宙観(講談社学術文庫)』  阿部謹也(講談社、1991年)
対談 中世の再発見―市・贈与・宴会(平凡社選書)』  網野善彦・阿部謹也(平凡社、1994年)

* 彼はモースの言葉を引用しつつ、次のように述べる。「メラネシアの話と古代・中世ヨーロッパと一体どんな関係があるのだとお思いになる方もおられるかもしれませんが、実は深い関係があるのです。この贈与慣行について最もすぐれた研究を発表したフランスの社会学者マルセル・モースは次のように書いています。・・・この贈与の慣行は宗教、法、経済、道徳のすべての関係を貫きすべてとかかわる重要な制度であったのです。つまり古代社会には経済的取引がなかったのではなく、そこでの交換と契約の制度が私たちのそれと全く異なっているためにこれまで理解しえなかったにすぎないのだとモースはいうのです。(阿部 『ヨーロッパ中世の宇宙観(講談社学術文庫)』:158-59)」


 

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