「中期の局面」:垂直的発展

多角的な取引が可能となった商人的経済の次なる発展段階が、「中期の局面」である。それは、土地や労働など、本来では交換経済になじまない人間の生活領域にまで交換経済が浸透していく過程である。

「第一の局面」の水平的な発展では、「商人的経済」は実質的に、あるいは少なくとも相対的に、非商業的な社会のなかで営まれていた。そこでは、 「商人的経済」とその周辺社会との間の境界線はかなり明確であった。これに対して、「中期の局面」の垂直的発展においては、「商人的経済」とその周辺社会との間の障壁は大きく取り除かれる。そのため、それまでの非商業的な社会はさまざまな側面において、交換経済、つまり市場の浸透に直面する。

このように、「中期の局面」とは、まさに非商業的な社会に対する市場の浸透の過程であり、それは、貨幣の使用、法の整備、信用の確立の三つの制度に支えられて進展した。

参考文献:
経済史の理論(講談社学術文庫)』  J.R.ヒックス 新保博・渡辺文夫訳(講談社、1995年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック