ブローデルの「三層の時間論」

つまり、欧米社会において、「近代化」が進む過程で、それまでの「私」と「公」との関係の見直しが始まった。この「近代化」をリードしたイデオロギーこそ、「世俗主義」である。

しかし、アサドにとって、「世俗化」は、「世俗主義」というイデオロギーに還元することのできない、社会生活での私と公の関係を見直す具体的な作業である。

この意味において、イスラーム世界でも、近代西欧文明のイデオロギーの一つである「世俗主義」が浸透する過程で、社会生活での私と公の関係の見直し、つまり「世俗化」を経験した。この見直しは思想的にも、法的にも、慣習的にもなされた。

参考文献:
世俗の形成-キリスト教、イスラム、近代』  タラル・アサド 中村圭志訳(みすず書房、2006年)
「イスラーム思想史における公と私」板垣雄三 『公共哲学1 公と私の思想史』  佐々木毅・金泰昌編(東京大学出版会、2001年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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