イスラーム世界の経済社会に深く組み込まれている賃貸

賃貸はアラビア語でイジャーラ(ijara)と呼ばれる。

イスラーム法で賃貸契約の対象になったのは、さまざまな種類の労働(賃金契約)であり物件(定額小作契約を含む、物の賃貸借契約など)であり信用(資金調達の手段)であった。契約者が女性であることも普通であった。

イスラーム世界で賃貸は経済のほか、社会の仕組みのなかに深く組み込まれていた。そして、それを象徴するのが、ワクフ(寄進)制度である(第一巻『イスラーム経済の基本構造(理論編)』を参照)。

ワクフ制度とは、ワクフ施設(モスク、マドラサ、サビール、病院、墓地などの慈善的、公共的施設)の建設・維持・運営を、ワクフ物件(土地や建物など、賃貸によって収益を生むことができ、永続的な履行が期待できる不動産)からの収益をもってする制度である。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第6章:宗教  加藤博(東京大学出版会、1995年)
「イスラーム法における所有権の構造―基体果実と使用果実を中心として」柳橋博之 『比較史のアジア 所有・契約・市場・公正 (イスラーム地域研究叢書)』  三浦徹ほか編(東京大学出版会、2004年)

□参照知識カード:
社会は誰がつくるものなのか 民主主義って何?
マドラサ
ワクフ


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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