イブン・ハルドゥーンの「田舎の文明」

「田舎」とは、農業と牧畜業を生業とする農民と遊牧民が居住する空間である。しかし、イブン・ハルドゥーンにとってそれは、彼が生活した北アフリカの生態的特徴の反映から、遊牧民の住む砂漠としてもっぱらイメ-ジされた。

そこでの「田舎の文明」とは、砂漠の民の部族集団をまとめあげる血に基づいた連帯意識(アサビ-ヤ)を「社会的結合」原理とする文明であり、それは、粗野ではあるが連帯意識に基づく活力にあふれている。

そして、この血に基づいた連帯意識(アサビ-ヤ)に基づく「社会的結合」原理こそ、政治の原理である。つまり、田舎の文明がよって立つ人的結合原理が生みだす物理的な「力」、それが政治の原理であり、王朝の存立基盤である。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第7章:文明  加藤博(東京大学出版会、1995年)
イブン=ハルドゥーン(講談社学術文庫)』  森本公誠(講談社、1980年)
歴史序説 3(岩波文庫)』  イブン ハルドゥーン 森本公誠訳(岩波書店、1978~87年)


 

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