ムフタシブ(市場監督官)

そして、市場での公正な取引を監視、監督することを担ったのが、ムフタシブ(市場監督官)である。ムフタシブは、ウラマーと呼ばれたイスラーム法学者のなかから選ばれた。

彼らは、世俗権力である国家に対してその統治権を弁護し、支えるという公人の役割を担う一方で、信徒共同体(ウンマ)の理念の体現者として、世俗権力から一線を画し、政府の政策を監視するなかで、住民の利益を守る立場にもあった。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第6章:宗教・第2節:商人文化としてのイスラム  加藤博(東京大学出版会、1995年)
「ヒスバとムフタシブ-中世イスラームにおける社会倫理と市場秩序の維持」湯川武 『国際大学中東研究所紀要』Ⅲ、1987・88年

関連知識カード/章説明他: ウラマー


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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