イスラーム文明の特徴の3つめは、法である。
ムスリムが守るべききまりは、すべて聖典『クルアーン』に収められている。しかし、預言者ムハンマドの没後(西暦632年)、『クルアーン』には言及のない新しい事態が続出した。
そこで、『クルアーン』を手がかりに神様の意図を解釈することで、新しい法規定を作り出すイスラーム法学が登場した。イスラーム法は、その担い手であるイスラーム法学者たちによって整備された政治、経済、社会を包み込む首尾一貫した法体系であり、イスラーム文明の屋台骨を支えたのである。*
参考文献:
『イスラームとは何か―その宗教・社会・文化(講談社現代新書)』第5章:知識の担い手たちと国家 小杉泰(講談社、1994年)
『現代中東とイスラーム政治』第5章:イスラーム法の論理 小杉泰(昭和堂、1994年)
『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第3章第1節:森羅万象は唯一神アッラーの被造物 加藤博(詩想舎、2020年)
『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』第1章第1節:イスラーム世界の成立と展開 加藤博(詩想舎、2020年)
*イスラーム世界は「西欧近代」よりはるか以前に「法の支配」を確立していた。経済発展のためには所有権や契約に関する法整備が整っていることが必要だ。また統治者も法の下にあるというコンセンサスがなければならない。この両方がイスラーム文明にはすでにあった。[編集部]
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★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。
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