物理的な時間と人間的な時間

物理的な時間とは、時計で測れる客観的な時間である。これは、ユダヤ教、キリスト教、イスラームと続く一神教の「アブラハムの宗教」での時間観を引き継いで、ヨーロッパ近代が生み出した時間の観念である。

「アブラハムの宗教」における時間観は、創世から終末へと一直線に進む時の流れと意識されており、歴史的にみて、きわめて特殊な時間の感覚である。それ以外の宗教や文明では、ギリシア古代のように、時間は周期性と反復性をもつと理解されたり、仏教のように、そもそも流れのない混沌と認識されていた。

人間的な時間は、社会生活との関係のなかで経験として認識され、切り取られた時間であるが、周期性と反復性をもつ時間の流れに近い。つまり、それは、人間的ものさしによる年齢、持続期間、変化の量であり、相対的な時間の流れである。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第一部第1章第2節:歴史―時間の重層性  加藤博(NTT出版、2005年)
空間、時間、そして人類―時空認識の人類史』  グレイアム クラーク 服部研二訳(法政大学出版局、1995年)
時間の歴史―近代の時間秩序の誕生』  ドールン-ファン・ロッスム 藤田幸一郎ほか訳(大月書店、1999年)


 

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