AIやデジタル教材は学びを深め広げる便利な道具です。しかし使い方次第で子どもの力を育てる機会を奪う盲点もあります。ポイントは、イメージ(映像・絵)とテキスト(文字・式)の得手不得手を知り、使い分けることです。そういう知見を「知恵クリップ」から探っていきましょう。
1. 保護者が求める「表現力」——その土台は紙と文字にある
保護者の約4割が子どもに身に付けてほしい力に挙げたのが「表現力」、つまり自分の考えを言葉にして伝える力です。読書が好きな子は文章を書くことも好きな傾向があり、読解力や語彙、教養がその土台になります。約6割の保護者が、教育では紙の本を多めにすべきだと考えています。それもそのはずで、文字は情報が順序立てて整理されているため、筋道を追う力や言葉で説明する力を養うのに向いているのです。
2. デジタル教材の盲点——思考プロセスを可視化する重要性
次に「思考プロセス」。デジタル教材の採点は答えの正誤が中心で、どう考えて解いたかという途中の過程は判定されにくいと指摘されています。途中式を自分で書き、考えを筋道立てて残す経験が、入試で求められる思考力や記述力につながります。
さてこう見てくると、AIは使い方や活用設計が鍵だといえそうです。たとえば生成AI「Gemini」の「ガイド付き学習」機能は、思考プロセスに配慮しています。それでもAIには「誤る」くせ(ハルシネーション)があり、要約だけで満足するようでは、読解力が育ちません。ニューヨーク市が小中学校でのAI利用を1年間停止し、スウェーデンが紙へ回帰しつつあるのも、こういった事情を背景にした決断でしょうか。いま世界はAIを含めたデジタル技術を、目的ではなく手段である、ことに留意する方向へ舵を切っています。
3. イメージ(映像)の強み——直感的な理解を助ける
一方、イメージには文字にない強みがあります。「目で見る算数」は「ピタゴラスイッチ」の制作陣と教科書会社が作った映像教材です。全国学力調査では、数や式、図で表現し説明することに課題が見られ、抽象的な概念を数式と文字だけで理解しようとするとつまずきがちです。動きのある映像なら意味を直感的につかめます。
「イメージから母語を理解する」学びも同様です。漢字教材「Hi! Kanji」は、漢字を意味ある最小の部品に分け、絵やアニメーションを見ながら母語で意味を理解します。読み書きの前に像を持つことで、記憶に結びつきやすくなります。
まとめ
イメージは「分かる入口」、テキストは「考えを組み立て伝える道具」。両方を行き来し、そのうえでAIは考える手助けとして使う、こういう知恵がこれからの学習に欠かせないといえるでしょうか。
■知恵クリップ
●保護者4割、子に身に付けてほしいのは「表現力」 読書が好きな子は文章を書くことも好きな傾向に https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001621.000049291.html
習慣的に読書をすることで、子どもにどのような良い影響があると思いますか:
・「読解力が向上する」
・「語彙が増える」
・「新たな知識を得ることができる」
・「教養が深まる」

●児童書を読む小学生の3割以上が、学年目安とは異なる対象年齢の児童書を読んでいることが判明! https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000406.000032562.html
「小学生以下の子供をもつ保護者の約半数が読書時間を意識的に確保しており、約6割が教育においてデジタルより紙の本や絵本を多く、またはすべて紙にすべきと考えている」
・教育における紙とデジタルのバランス

●小学生の勉強に「デジタル学習」はアリか…中学受験のプロ「低学年のうちは電子辞書より紙の辞書」の深い理由 https://president.jp/articles/-/117273?page=2
「デジタル教材の採点は、答えが合っているかどうかだけで、途中でどういう計算をしてきたかという過程は、判定の対象にならない。(略)つまり、今の入試問題で求められている思考力や記述力が育ちにくくなってしまうということだ。
今後、AI採点が進化すれば思考プロセスも判定できるようになるだろうが、小学生の勝手気ままな記載を読み取れるようになるのは、まだ数年はかかるだろう。」
●マムダニ市長、60万人の生徒の教室から生成AIを追放。AI時代にNY市の小中学校で1年間停止を発表 https://www.businessinsider.jp/article/202609-newyork-generativeai-students-moratorium/
「2026年9月2日、市教育局は1年間の生徒によるAIの利用停止 を小学校と中学校の教室で実施すると当局者は述べた。
一方、高校生は毎年2つの「AIリテラシー講座」を受講し、特定の教育用途に限ってAIプログラムを利用できると、ニューヨーク市の教育長であるカマー・サミュエルズ(Kamar Samuels)は述べた。」
●「教科書のデジタル化は目的でなく手段」スウェーデン大使館 日本に先駆け導入も紙に回帰 https://www.sankei.com/article/20260902-OILIELKYNNPEJP4L7Z4FRYIENA/
「デジタルは教育の質を高める「手段」であり、デジタル化そのものを目的にしてはならない。導入は子供の発達段階や教育目標に応じて段階的に進めるべきで、成功の指標は端末の普及率ではなく、学力や読解力の向上といった教育成果であるべきだ。」
●あの「ピタゴラスイッチ」の制作陣と教科書会社が共同開発した映像コンテンツ「目で見る算数」 https://www.jiji.com/jc/article?k=000000002.000186732&g=prt
「「令和7年度全国学力・学習状況調査」の報告書によりますと、「事象を数理的に捉えて、言葉や式、図などを用いて主体的に表現し、説明すること」に関する課題が指摘されています。算数の抽象的な概念を紙の上の数式や文字だけで理解しようとすると「つまずき」が生まれがちです。」
・「目で見る算数」:サンプル動画
●デジタル教科書が正式化、2030年度から 子どもの「読む力」とAI依存を家庭でどう防ぐか https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/bf6b1221d40e652cf75e9735f6308fb87e9184d1
「一方、答えではなくヒントを出すよう設計したAIでは、悪影響はほぼ解消した。問題はAIそのものよりも、使い方と設計にあると言えそうだ。
AIの回答は誤ることもあり、使う側が確かめる必要がある。要約だけ読んで満足する習慣がつくと、誤りに気づくための読解力そのものが育ちにくくなる。」
●中高生のスマホ「何時間使った?」より「何に使った?」 Google社員の“制限しすぎない”子育てルールとは https://dot.asahi.com/aerakids/articles/-/292216
「小島さん自身が家庭学習で有効だと感じているのが、Googleの生成AI「Gemini」の「ガイド付き学習」だ。答えをすぐに示すのではなく、問いかけやヒントを重ねながら、理解を深めていくことができる。」
●「読む・書く」の前に漢字をイメージ、14言語対応の「Hi! Kanji」登場 https://edu.watch.impress.co.jp/docs/news/2137815.html
「教材では、漢字を構成する最小単位を「Element(エレメント)」と呼び、一つ一つを意味のある漢字のパーツとして学習する。エレメントは、「顔」「身体・人」「動物」「植物」「自然・風景」「家屋・建物」など12分野に分類し、絵やアニメーションを見ながら意味を母語で理解する仕組みだ。」
・例:「雨」を「運ぶ」のが「雲」





