中東諸国体制は独自に国民経済を運営することができないほど弱小な国家の集合体であり、そこでは、各国が国益をぶつけ合った。
その過程で、イスラーム世界の中核であった中東の世界経済に占める位置は、石油とイスラームの問題を除けば、低下した。
中東諸国体制形成の影響は政治、経済にとどまらず、住民の生活全般に及ぶことになった。国境の設定によって、住民の歴史的な生活圏が破壊されることになったからである。
その典型的なテーマが水の問題である。水が絶対的に少ない中東では、恣意的な国境引きは川であれ地下水であり、水の環境に基づいて営まれてきたそれまでの生活を破壊し、国家間の水をめぐる紛争を多発させることになった。
参考文献:
『文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第1章:生態系 加藤博(東京大学出版会、1995年)
『歴史の現在と地域学-現代中東への視角』 板垣雄三(岩波書店、1992年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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