伝承の鎖

真のハディースと偽のハディースとを選別する基準は独特であった。通常、われわれはそれをマトン、つまり伝承の内容を吟味することによってなす。たとえば、AのハディースとBのハディースの内容が矛盾すれば、AかBのどちらかが真の、そして偽のハディースということになる。

しかし、イスラーム法学者の選別方法は違った。シルシラ、つまり伝承の鎖に注目したのである。その上で、伝承の鎖が途切れないで伝わっているかを、伝承者の伝記をチェックするなかで確認していったのである。

たとえば、A、B、Cの三人の人物によって伝承が伝えられたとされた場合、AとB、BとCがその人生において接点があり、伝承が伝えられたと判断されるならば、伝承は真とされ、接点がないと確認されたなら、伝承は偽とされたのである。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部第8章:イスラム金融を支えるもの  加藤博(書籍工房早山、2010年)

 


★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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