ヒヤルとは

ヒヤルとは、文字通り「だますこと」を意味するアラビア語であり、その合法性をめぐっては法学派の間で議論はあるが、イスラーム法学の一分野として認められた弁証術のことである。つまり、本来はシャリーア(イスラーム法)において非合法な契約を合法な契約として言いくるめる弁証である。*

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部第7章:イスラム金融と金融資本主義  加藤博(書籍工房早山、2010年)
イスラム法通史』  堀井聡江(山川出版社、2004年)

* Aと B の間で売買契約が結ばれ、買主 B はただちに代金を支払った。つづいて売主 A は目的物を買い戻したが、その際、代金支払に半年の期限を付し、かつその金額を最初の代金よりも高く設定した。ここで、a)単一の契約のなかにこの二つの売買が併合されていれば、契約の併合の禁止により、両売買は無効である。b) 二つの売買がまったく独立に結ばれ たならば、両売買は有効である。c) 当事者が 二つの売買契約を形式上は別個に結んだが、実際には利息付金銭貸借を成立させる意図を有していたならば、利息の禁止を潜脱するためのヒヤルを用いたことになる。(柳橋博之「ヒヤル」『岩波イスラーム辞典』814頁)



 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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