イスラーム世界における水の希少性

中東イスラーム世界の自然環境は、過酷である。イスラームが成立した7世紀から今日までの間に、多少の気温の変化がみられたとしても、植生や土地利用を「革命的」に変える気候の変化があったとは考えられない。

人が天水で農耕が可能な年間降雨量は250ミリであるが、地中海沿岸地域と山岳地帯を除けば、ほとんどの中東イスラーム世界は、年間250ミリの雨量さえ確保できない、砂漠性乾燥気候地である。それゆえに、人工的に水を確保しない限り農業を営めないし、人が住めない。中東イスラーム世界ほど、確保できる水の量、植生・土地利用、人口密度の三つが直接関連しあう世界はない。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第1章:生態系  加藤博(東京大学出版会、1995年)
W.B. Fisher, The Middle East, 7th edition, Methuen & Co LTD, 1979


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック