イスラーム経済知の普遍性(その2)

歴史をひもとけば、すでに私たちの経済を支えているイスラーム経済知があることに気づかされる。例えば、小切手のしくみは、東は中央アジア、西はイベリア半島までの広大な領域を統治したイスラーム帝国であるアッバース朝(750~1517)で発達したものである。

また、第6章第6節「イスラーム金融の歴史的意義」で述べたように株式会社のしくみの起源も中東にあり、それがムダーラバとしてイスラーム帝国で定式化された後、地中海を北に渡っていったのである。

現在、小切手や株式会社をイスラームの知的遺産と考える人はほとんどいないだろう。しかし、こうした歴史的事実からは、イスラーム経済知が信仰の垣根を越えて人類共通の知的遺産になりうる普遍性を持っていることを実感できるのである。

参考文献:
Geoffrey Khan Bills, Letters, and Deeds: Arabic Papyri of the 7th to 11th Centuries. New York: Nour Foundation in association with Azimuth Editions and Oxford University, 1993
A. L. Udovitch “At the Origins of the Western Commenda: Islam, Israel, Byzantium?,” Speculum 37(1), pp. 198-207, 1964.

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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