経済面でのイスラーム復興は、金貸しの利子をめぐる論争から始まった。
20世紀初頭のエジプトで、郵便貯金サービスを使っていた庶民が、その貯金に付いてくる利息がイスラームで禁じられている不当利得(これをリバーと呼ぶ。詳しくは下巻第6章「リバー禁止の経済学とイスラーム金融」参照)に相当するものなのではないかという疑問をイスラーム法学者に投げかけたのだ。
当時のエジプトのイスラーム法の裁定官を務めていたムハンマド・アブドゥ(1849~1905)は、郵便貯金の利息は不当利得だとして受け取ってはならないという判断を下したが、それに反対する意見も少なくなく、不当利得禁止の教義と利子の関係をめぐって論争が起こった。
参考文献:
Emad H. Khalil and Abdulkader Thomas “The Modern Debate over Riba in Egypt,” in Abdulkader Thomas, ed. Interest in Islamic Economics: Understanding Riba. London; New York: Routledge, pp. 69-95, 2006.
『現代イスラーム金融論』第2章:リバー論の系譜 長岡慎介(名古屋大学出版会、2011年)
「徴利論2(リバー)」小杉泰 『歴史学事典1 交換と消費』 川北稔編(弘文堂、1994年)
★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(上) 資本主義の危機とイスラーム経済の登場』を構成している「知識カード」の一枚です。
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