ポランニーの経済観

ポランニーは、現代の経済社会が市場経済のもとに成り立っており、近代経済学はそれを分析するのに有効な手段であることを認めつつも、その(市場経済)理論を超歴史的に適用し、歴史上のすべての経済制度をそれでもって説明する誤りを繰り返し批判した。

とりわけ重要なのは、市場経済万能主義を批判するなかで、かれが市場経済の三要素として、交易、貨幣、市場を取り上げ、そのトートロジー的性格を、カトリックの三位一体の教義に比して、指摘したことである。

このトートロジーは当然で、三つの要素が指摘されているものの、実際には、交易と貨幣の二つの要素は市場という要素に従属させられている。つまり、この三つの要素の定義において、交易は市場における財の移動であり、貨幣はそれを助ける交換手段だというのである。

しかし、歴史の現実においては、交易、貨幣、市場の三つは、それぞれ独自な起源をもち、関係し合いながらも、それぞれの歴史を歩んだ。そのなかで展開されたのが、「社会に埋め込まれた経済」である。

参考文献:
人間の経済 Ⅰ、Ⅱ (岩波現代選書)』  K.ポランニー(岩波書店、1980年)


 

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