制限すべきは金銭欲の過剰な行使

つまり、ひとは金銭欲に限らず、多くの欲望をもっている。そのなかには、邪な欲望もある。しかし、それもまた万物の創造主である神が作り、許したものである。欲望に、正しい欲望と正しくない欲望との区別をつけることは、神の唯一絶対性を否定することにつながる。もしそれが悪い欲望であったとしても、欲望それ自体が否定されるべきものではない。

かくして、ひとの金銭欲自体は、肯定される。否定されるべきというか、正確には、制限されるべきは、金銭欲の過剰な行使である。誠実で信用のおける商売を行なうならば、商人は礼賛する対象なのである。

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第6章:宗教・第2節:商人文化としてのイスラム  加藤博(東京大学出版会、1995年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック

 

この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます