ハディース

預言者ムハンマドの言行(スンナ)を伝える伝承、それを活字化した言行録。シャリーア(イスラーム法)を体系化する作業のなかで、最高位の法源コーランを補う法源として、またコーランに準じる規範として預言者ムハンマドのスンナが大量に収集された。そして、膨大な量のスンナの真偽を見極めるために、ハディース学が作られた。そこでは、ハディースがマトン(内容)とシルシラ(伝承の鎖)とに区別され、マトンよりもシルシラを重視してハディースの真偽を判定する手続きが取られた。この形式合理的な手続きが、イスラームの弁証方法の基本となった。

個々の伝承は、本文と伝承者の名前を列記した部分からなる。スンナが預言者ムハンマドの死後、宗教・倫理、法慣行における判断の基準となるが、そのスンナの内容を確定する拠り所がハディースである。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部第8章:イスラム金融を支えるもの  加藤博(書籍工房早山、2010年)
新装版 イスラム:思想と歴史』  中村廣治郎(東京大学出版会、2012年)

■関連知識カード/章説明他:
ハディース集の編纂
ハディース学にみる形式合理性 マトンとシルシラ


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック