家計の経営

そして、「家計の経営」である。これは、ギリシア哲学にある家計(オイコノミア)の概念を受け継ぎ、イスラーム思想家によって一つの科学として発展させられたテーマである。

具体的には、財産運用の技術を扱った資産の経営(tadbīr al-māl)、妻の家計での役割を扱った女の経営(tadbīr al-mar'a)、子供の教育を扱った子供の経営(tadbī al-walad)などからなる。*

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第5章:統治観  加藤博(書籍工房早山、2010年)
商品学の誕生―ディマシュキーからベックマンまで』  風巻義孝(東洋経済新報社、1976年)
「ムスリム商人ディマシュキーの商業書について」稲葉隆政 『地中海世界と宗教』  坂口昂吉編著(慶應通信株式会社、1989年)

* 11世紀のディマシュキーの商業学は、第三の「家計の経営」の科学を商業活動に適用したものである。彼の『商業の功徳 商品の良否と欺瞞者の虚偽に関する知識への手引書』は世界最古の商業書の一つとされ、そこでは、財の本質と富の礼賛にはじまり、貨幣論、商品論、商人論など、商業という職業がさまざまな角度から論じられている。


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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