市場の勃興

市場の勃興とは、みずからは生産に従事せず、ものとサービスの交換を仲介することによって利益をえる専門家集団、つまり商人の発生である。

商人は、市場とは無関係な慣習経済(petit commerce 小商業)と指令経済(grand commerce 大商業)とから生まれた。慣習経済と指令経済はそれぞれ、先に指摘した、ポランニーによる「経済統合」の三類型における互酬と再分配に相当する。交換が経済的交換であるのに対して、互酬と再分配は社会的交換である。

市場経済とは、この専門家集団である商人を媒介とした交換経済、つまり商人的経済である。商人によって媒介される個々の取引の集積として市場が歴史的に形成される。

参考文献:
経済史の理論(講談社学術文庫)』  J.R.ヒックス 新保博・渡辺文夫訳(講談社、1995年)
人間の経済 Ⅰ、Ⅱ (岩波現代選書)』  K.ポランニー(岩波書店、1980年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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