言語と認知的流動性

人の移動と目的に応じた組織の編成に決定的な役割を果たしたのは言語の登場である。

言葉は見えないものを見せ、距離と時間を越えて物事を伝達する機能を持つ。しかもポータブルで効率的なコミュニケーションである。

スティーブン・ミズンは、人類がそれまで別々の神経モジュールとしてもっていたさまざまな知能が、言語によって連結されて認知的流動性が生まれたことが、新しい概念や技術をもたらしたと言う。I):神経モジュールとは同じような問題を解決するための知識に対応する神経の束で、博物的知能、技術的知能、社会的知能のモジュールがある。人以外の動物にもこれらの知能はある。しかし言語を獲得する前の人類同様、それらは独立して働き、問題を解決している。この状態を変え、別々のモジュールを連携させたのが言語の力だった。
「言語の持つもっとも重要な機能は比喩である。たとえば、胃袋は内容物をとりだせば、ものを入れる袋になる(博物的知能と技術的知能の連携:編集部註)。(略)ライオンのように雄々しいとか、キツネのようにずる賢いとか表現できれば、仲間の性格を一言で表現できるし、それを用いて仲間同士の関係を理解しやすくなる(博物的知能と社会的知能の連携:編集部註)。(『家族進化論』第六章・第一節 ホモ・サピエンスの登場)」[編集部]


■参考文献
『心の先史時代』  スティーヴン・ミズン 松浦俊輔・牧野美佐緒訳(青土社、一九九八年)原著一九九六年

★この記事はiCardbook、『人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality)(下)共感社会と家族の過去、現在、未来』を構成している「知識カード」の一枚です。

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I. :神経モジュールとは同じような問題を解決するための知識に対応する神経の束で、博物的知能、技術的知能、社会的知能のモジュールがある。人以外の動物にもこれらの知能はある。しかし言語を獲得する前の人類同様、それらは独立して働き、問題を解決している。この状態を変え、別々のモジュールを連携させたのが言語の力だった。
「言語の持つもっとも重要な機能は比喩である。たとえば、胃袋は内容物をとりだせば、ものを入れる袋になる(博物的知能と技術的知能の連携:編集部註)。(略)ライオンのように雄々しいとか、キツネのようにずる賢いとか表現できれば、仲間の性格を一言で表現できるし、それを用いて仲間同士の関係を理解しやすくなる(博物的知能と社会的知能の連携:編集部註)。(『家族進化論』第六章・第一節 ホモ・サピエンスの登場)」[編集部]