ヒト科の中で唯一生き残った種、私たちホモサピエンス。生き残りの秘密は「社会的知性」にあった。この人類の進化の冒険を俯瞰し人類の未来社会への示唆を探る、「ゴリラの国の留学生」、山極寿一(第二十六代京都大学総長)からのメッセージ。本郷峻(京都大学霊長類研究所 研究員)との共著。MOOCのひとつEDXの講座、「Evolution of the Human Sociality」の副読本。
混迷の21世紀を生きる私たちに、望ましいこれからの社会像とは、そして家族像とは、を考えさせる、「社会的知性」の起源と進化を明らかにする書。
家族の変容、教育現場の混乱、子供の貧困、格差、テロ・紛争、環境変化への適応など21世紀が抱えるヒト社会の課題に、ゴリラ、サル、チンパンジーが教えてくれるヒント・ティップス集でもある。
(Evolution of the Human Sociality)
上下巻に分かれ、上巻は「サバンナへの進出」「出アフリカ」など、祖型人類から始まる「進化の冒険」が語られる。霊長類学、社会人類学、文化人類学、先史考古学、民族学などの学習者・研究者の参考図書。
下巻は「society5.0」を目前にした現代にあって、「社会」を学び、「社会」を対象にした仕事を担う人のための参考図書となるであろう。コミュニケーション学、家族学、言語学、認知心理学、脳神経学、平和構築学、法社会学、都市経済学、経済人類学、など多岐にわたる知見がちりばめられ、知的興奮を堪能できる。
イラスト:坪川 桂子(京都大学人類進化論研究室/2017年4月現在)
「日本の霊長類学は当初から人間以外の動物に社会や文化の存在を求めてきた。その始祖である今西錦司は、「集まる」ことだけが社会の条件ではないと考えた。離れあっていても、出会わなくても、同種の個体はお互いの存在を感知しあっている。そしてそれぞれの種の個体は生活する「場所」において、他の種の個体と反応しあいながら共存している。それを今西は「種社会」、「全体社会」と呼んだ。この「場所」とは具体的な場所を指すのではなく、生物どうしがものや行動を通じて感応しあうことを意味している。実はこの考えは、西田哲学の影響を強く受けて練られている。西田は、生物自体ではなく、生物世界を構成するものとものとの間に働く動的関係が重要と考え、そこを「無の場所」と呼び、その見えない働きを見定めることを「直観」と称した。今西の「環境はその生物が認識し、同化した世界であり(環境の主体化)、生物は身体のなかに環境を担いこんでいる(主体の環境化)」という言説は、まさにこの西田の思想を体現したものである。」(山極 寿一)
Shun Hongo
Juichi Yamagiwa
山極 寿一
本郷 峻
第二十六代京都大学総長
京都大学霊長類研究所 研究員
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