「再分配」を基本とした社会

このポランニーの「経済統合」論は多くの歴史研究者、とりわけ前近代を専攻する研究者に多くのインスピレーションとアイデアを与えた。

たとえば、ビザンツ史家の渡辺金一は、このポランニー経済統合形態のうち「再分配」を取り上げ、コンスタンチノ-プルを中心とした「再分配」社会としてのビザンツ社会のモデル化を試みた。*

参考文献:
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第6章:宗教・第4節:経済統合システムとしてのワクフ制度  加藤博(東京大学出版会、1995年)
コンスタンティノープル千年―革命劇場(岩波新書)』  渡辺金一(岩波書店、1985年)
「ビザンツ モデル〈再分配社会〉再論」渡辺金一 『地中海論集12』一橋大学地中海研究会、1989年

* たとえば、彼はビザンツの社会各層にスキャンダルが染みついていたことを指摘したあと、次のように述べている。「ポランニーの筆法をもってすれば、ビザンツでは、市場交換でもなければ、ましてや互酬でもなく、まさに再分配、つまり、国家という再分配の巨大な機構に経済の重点があり、国家のなんらかのポストに就くことで、この再分配機構にタッチし、そこから利益をひき出す可能性を手にする者には、抗しがたいスキャンダルの誘惑がころがっていた、ということになる。(渡辺 1985:14)」


 

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