商業における「利益の均霑」

それを、彼は、商業における「あらゆる取引当事者による利益の均霑( All-round advantage )」-略して「利益の均霑」と表現した。

「利益の均霑」とは、「商取引においては、それが自発的である限りにおいて、ものを売る者も買う者も、取引を仲介する商人も、すべて自主的かつ主体的に参加し、何らかの利益を得る、というよりは、彼らは、何らかの利益を得られるがゆえに、商取引に自主的かつ主体的に参加する」との考えである。* 

この利益の均霑という原則によって、商業は農業や工業など、なにがしかの強制をともなう生業と区別することができる。

参考文献:
経済史の理論(講談社学術文庫)』  J.R.ヒックス 新保博・渡辺文夫訳(講談社、1995年)

* 市場に「自生的社会秩序形成プロセス」のビジョンをみることを可能にさせているのは、「それが自発的である限りにおいて」という条件のもとでの、商業における「利益の均霑」である。


 

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