イスラーム経済の将来 その1

イスラーム経済はイスラーム復興とオイルマネーとに結びついた現代の「あだ花」か、それとも新しい「倫理と経済」の結びつきからなる市場経済の可能性を示唆するものなのか。

イスラーム経済は、体系だった経済プログラムを持つわけではなく、特異なビジョンを核とした独自なダイナミズムを持つ「運動」と捉えられる。

そして、「運動」である限り、それは、理論では割り切れないイデオロギーとしての性格を持っている。

イスラーム経済の「運動」としてダイナミズムをもたらしているのは、イスラームという宗教と膨大なオイルマネーであった。イスラーム経済に、イスラームはビジョンを、オイルマネーは活力を与えてきた。

将来、オイル・マネーの背景を失っても、残りの21世紀において、イスラーム金融は生き延びることができるであろうか。その評価は、現代の金融資本主義の将来に対する不安にどう答えうるかにかかっている。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部10章:運動としてのイスラム金融  加藤博(書籍工房早山、2010年)
市場社会のブラックホール―宗教経済学序説』  佐藤光(東洋経済新報社、1990年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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