こうした価格の上下によって供給と需要が一致するしくみは、市場(しじょう)の価格メカニズムと呼ばれる。市場の価格メカニズムでは、誰かが適切な価格を一律に決めているわけではない。違いを見つけてきたモノを1円でも高く売ってお金儲けをしたいという売り手や、自分が欲しいと思うものを1円でも安く手に入れたいという買い手のばらばらで利己的な行動の帰結として、自律的に価格(市場価格)が決まるのである。経済学の祖と呼ばれるアダム・スミス(1723~1790)は、そのメカニズムを神の見えざる手と表現した。
参考文献:
『ミクロ経済学の力』第3章:市場均衡 神取道宏(日本評論社、2014年)
『国富論(上・下)』 アダム・スミス 山岡洋一訳(日本経済新聞出版社、2007年)
『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』第1章第2節:なぜ市場経済としてイスラーム経済を取り上げるのか 加藤博(詩想舎、2020年)
□関連知識カード:
社会秩序形成において重要な下からの交渉の積み重ね
★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(上) 資本主義の危機とイスラーム経済の登場』を構成している「知識カード」の一枚です。
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