ホモ・エコノミクス批判とその帰結(その2)

巷に溢れるポスト資本主義論の多くは、ホモ・エコノミクス批判にもとづく理想論を掲げがちである。しかし、利他的行動を称揚することが必ずしも望ましい帰結をもたらさないことは、20世紀の共産主義の歴史的経験が明快に物語っている。資本主義の揚棄を掲げたソビエト型の共産主義も、原始共産制への回帰を掲げたカンボジアのクメール・ルージュ*も、悲劇的な結末を迎えたことを私たちは知っている。

参考文献:
ソビエト帝国の崩壊』  小室直樹(光文社、1980年)
ポル・ポト―ある悪夢の歴史』  フィリップ・ショート 山形浩生訳(白水社、2008年)

*カンボジアの反政府勢力。「赤いカンボジア人」の意で、通常はカンボジア共産党勢力、とりわけその主流たるポル・ポト派を意味する。彼らは共産主義国家「民主カンプチア」の樹立を宣言、反都市,反貨幣経済,反知識人という徹底した農本主義的共産主義を実現しようとし,おびただしいカンボジア国民の生命を奪った。最後は1998年4月のポル・ポト死亡によりその活動が事実上停止された。

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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