イスラーム世界は、投資、就業機会を多く持った社会

イスラーム世界では、一人の人間が同時に複数の職業についていた。また、一生の間になんども職業を替えることはあたりまえであった。

また、子供が親の職業を継ぐとは限らなかった。つまり、イスラーム世界では、多くの投資、就業機会が開かれており、ウラマー(法学者)の有名家系を除けば、何代にもわたって特定の職業の有力家系が長く続くことは少なかった。

実際、近世(17、18世紀)のカイロの都市社会を研究したフランスのイスラーム史家アンドレ・レイモンは、大商人の家系は続いてもせいぜい三代か四代であると指摘している。

参考文献:
「イスラーム市場社会の歴史的構造」加藤博 『比較史のアジア 所有・契約・市場・公正 (イスラーム地域研究叢書)』  三浦徹ほか編(東京大学出版会、2004年)
Andre Raymond, Artisans et commercants au Caire au Xviiie siecle
, 2 vols., Institut Francais, Damas, 1973]


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック