公共施設としての商館

つまり、一方で商館の建物全体はワクフ(イスラーム的寄進)として設定されることによって、その所有権は凍結された。

そのため商館は、個人に所有された場合に生じたであろう、所有権の移転、所有者の変更にともなう取引上の不都合を回避することができ、その公共施設としての性格を継続的に維持することができた。

さらにもしそれが慈善ワクフとして設定された場合には、そこからの収益はすべて慈善、公共目的に利用された。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第5章:ワクフ(寄進)制度にみるイスラム市場社会  加藤博(NTT出版、2005年)
T.Walz, Trade between Egypt and Bilad as-Sudan 1700-1820, IFAO, Cairo, 1978


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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