「中期の局面」における商人的経済の垂直的発展によって、次の三つの過程が進展した。(1)農業の商業化(土地市場の成立)、(2)労働市場の成立、(3)企業への課税によって可能となった国家財政の形成である。
「近代の局面」は土地、労働、資本の三つの市場のなかで展開するが、その過程で、その後の市場経済に決定的な影響を与える一つの制度が創案される。有限責任会社、つまり株式会社の制度である。その結果、資本市場が拡大し、資本の調達が容易になるとともに、企業利潤に対する課税(直接税)が容易になった。
巨大な信用創造によって、企業は調達した資本を工場での設備投資に向けることが出来るようになり、ここに近代工業が勃興することになった。産業資本主義の成立である。
参考文献:
『経済史の理論(講談社学術文庫)』 J.R.ヒックス 新保博・渡辺文夫訳(講談社、1995年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。
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