金融・情報センターとしての都市

農村から出発する通常の経済史の教科書では、農村が生産拠点であり続ける以上、都市は農村に依存する。都市が農村を支配するのは、都市が生産の拠点だからではなく、政治の中心だからである。

ところが、イブン・ハルドゥーンによれば、都市が農村を支配することは自明のこととされている。それも、その支配力の源泉は政治にあるのではなく、技術と貨幣の蓄積、つまり、経済にある。技術を情報と置き換えてもよい。

こうして、都市が農村を支配するのは都市が金融・情報センターとして機能するからであって、彼にとって、経済とは貨幣・技術・情報でもって運営される市場経済であることは改めて確認すべくもなく、自明なことなのである 。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 補論:イブン・ハルドゥーンの経済論  加藤博(NTT出版、2005年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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