イスラームの平等主義とイスラーム法の分割相続規定

イスラーム世界の高い流動性と多くの投資、就業機会は、平等主義のイスラーム理念によって担保されていた(第一巻『イスラーム経済の基本構造(理論編)』を参照)。つまり、イスラーム教徒はすべて、「神の奴隷」(アブドゥラー)なのである。

そのためもあって、イスラーム世界では、好まれる職業、好まれない職業はあったとはいえ、「穢れ」、忌避される職業に対する感覚は薄かった。

さらに、イスラーム法の相続規定は平等主義的であった。

イスラームはアラブの伝統であった族的結合(アサビーヤ)を否定し、信仰に基づく結合を主張したが、それはイスラーム法の分割相続規定にも反映された。血のつながりのない妻に相続を認めたのも、イスラームが最初であった。

参考文献:
「イスラーム市場社会の歴史的構造」加藤博 『比較史のアジア 所有・契約・市場・公正 (イスラーム地域研究叢書)』  三浦徹ほか編(東京大学出版会、2004年)
イスラム法入門(紀伊国屋新書)』  遠峰四郎(紀伊國屋書店、1964年)

□参照知識カード:
イスラーム教徒は「神の僕」である
イスラームの経済ビジョンとは


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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