ひとつの社会秩序が下からの交渉、取引の積み重ねと、上から与えられる権威、規範、制度とのインターフェイスな関係のなかで形成されるということは疑いない。
しかし、この関係のうち、われわれが20世紀における歴史の教訓として学ばねばならないのは、個、慣行から出発した、下からの交渉、取引の積み重ねの重要さと困難さである。この地道な積み重ねのプロセスを抜きにして、自生的社会秩序を形成することはできない。
この点において、市場は興味深い。なぜならば、そこでは、異なる動機に基づく匿名の主体の間での交渉、取引が、ひとつの「価格」の周りに収斂していくようにみえるからである。
参考文献:
『イスラム世界の経済史』 第一部第2章第3節:発見の手段としての「市場」 加藤博(NTT出版、2005年)
『ピアジェの均衡化概念の形成と発展』 日下正一(風間書房、1996年)
『混沌からの秩序』 I.プリゴジン、 I.スタンジェール 伏見康治ほか訳(みすず書房、1987年)
『自己組織性―社会理論の復活』 今田高俊(創文社、1986年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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