一つの身体を持った人工知能を考える時、知能の部分と運動を司る部分の接続が問題となります。
意思決定は基本的には離散的な記号的なシステムであることが多く、また運動生成は環境とインタラクションしながら連続的な動作を実現します。この二つの部分をどのようにつなぐかが次の課題でした。※I):ここで主従の逆転が頻繁に起こります。意思決定は何でも考えられるわけではなく、ある時は飛んでくるボールを避けるためにより身体的動作が優先される、ということがあります。もちろん平穏な時であれば長期的なプランを考えることもできます。抽象的思考か、身体的反射動作か、この二つの極を行ったり来たりするのが、知能なのです。
初期のゲームでは、基本的にAIが指定したモーションをキャラクターの身体が再生していました。その後キャラクターの身体は、環境(足元の地形や崖・壁など)や制約条件(敵の方向所持アイテム)に合わせて、自動的にその周囲の条件に合うように行動を変えるようになりました。※II):もっともそれは、再生したモーションを環境に合わせる、ということです。ところが知能とは本質的には、環境の中で目的に応じた運動を生成する能力であり、これはまだ達成されていません。
■参考文献
AI最前線の現場から【スクウェア・エニックス】 キャラクターの身体を作る 三宅陽一郎 二〇一六年
★この記事はiCardbook、『<人工知能>と<人工知性>: —— 環境、身体、知能の関係から解き明かすAI—— 』を構成している「知識カード」の一枚です。
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註
I. | 戻る | :ここで主従の逆転が頻繁に起こります。意思決定は何でも考えられるわけではなく、ある時は飛んでくるボールを避けるためにより身体的動作が優先される、ということがあります。もちろん平穏な時であれば長期的なプランを考えることもできます。抽象的思考か、身体的反射動作か、この二つの極を行ったり来たりするのが、知能なのです。 |
II. | 戻る | :もっともそれは、再生したモーションを環境に合わせる、ということです。ところが知能とは本質的には、環境の中で目的に応じた運動を生成する能力であり、これはまだ達成されていません。 |