<人工知能>と<人工知性>

環境、身体、知能の関係から解き明かすAI

三宅 陽一郎

18世紀から19世紀にかけカントやヘーゲルが現象学を哲学的方法論の核心をなすものとして位置づけ、特別な意味を与えた。20世紀、フッサールはそれを継承し、身体と経験から出発する、事物知覚の本質構造解明の道筋を明らかにし、デカルト的世界観を覆して見せた。

さて21世紀。ゲームの世界に3D技術が導入されたことで、ゲームキャクラターのプログラミングの世界に一大変革が生じる。ゲームキャラクターのプログラマーは身体性を通した、ゲーム世界で運動する知能、つまり経験する身体を持った人工知能の構築を開始することになったのだ。

この活動を通じいまやキャラクターAIは、現象学的アプローチを編み上げ、その結果人工知能から人工知性を展望しつつある。

 

「人工知能は工学(エンジニアリング)であり、科学(サイエンス)であり、哲学(フィロソフィー)なのである。(三宅 陽一郎)」

三宅 陽一郎(みやけ よういちろう)

 

ゲームAI開発者.人工知能学会編集委員,日本デジタルゲーム学会理事,芸術科学会理事,国際ゲーム開発者協会日本ゲーム AI 専門部会代表,デジタルコンテンツエキスポ委員、CEDECアドバイザリーボード.デジタルゲームにおける人工知能技術の理論的確立と実際のゲームタイトルへの具体的導入に従事.

 

単著『人工知能のための哲学塾』(BNN 新社,2016),『人工知能の作り方』(技術評論社,2016).共著『デジタルゲームの教科書』(SBCr, 2010),『デジタルゲームの技術』(SBCr, 2011),『絵でわかる人工知能』(SBCr, 2011),翻訳監修『ゲームプログラマのためのC ++』(SBCr, 2011),『C ++のための API デザイン』(SBCr,2012).ディジタルコンテンツシンポジウム 第 4 回 船井賞受賞(2008),CEDEC AWARDS 2010 プログラミング・開発環境部門優秀賞.日本デジタルゲーム学会 2011 年若手奨励賞受賞.講演資料は

https://www.slideshare.net/youichiromiyake で公開している。

インテリジェント・カード・ブック(intelligent card book)

略称「アイカードブック(icardbook)」

21世紀、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され、さらにモノ同士がデータ・情報をやりとりすることで、これまでにないサービスを実現する、モノのインターネット、IoT(Internet of Things)時代の鳥羽口に私たちはいます。モノが呼び交い、データ・情報を流通させる時代に、どうして本だけが閉じた系として存在し続けられるでしょうか。本と本とが呼び交い、交歓する世界(books as a service)の構築が急がれています。ただし モノのネットワーク化と本のネットワーク化とでは根本的な違いがあります。 モノ同士のデータ・情報のやりとりは、実際は記号の流通でしかありません。記号の流通で モノのネットワーク化は具体化できますが、 本のネットワーク化では「読む」という行為が必要です。

 

「読む」ことではじめて、記号は情報となり、そこへ行動・経験が加わり知識となり、集団にとっての知恵へと昇華していきます。そしてその「読む」の前提には、「このことはどの本に書いてあるだろう」という探索ニーズに対するソリューションが必要です。すでに英語圏(英語などの欧文書)ではこれを実現するための活動が始まっています(たとえば、GoogleBooks、あるいはPortable Web Publications for the Open Web Platform)。

 

「アイカードブック(icardbook)」は日本語圏(日本語による書籍)のための本のIoT実現へ向けた、ささやかな試みのひとつです。日本語圏の「知のエコシステム」を再起動させるための新しい本のカタチです。いわゆる「成書」は「閉じた系」を特徴とし論証性を軸に、一定の時間の経過を使いながら、最終ページまでに著者が読者の「説得」を試みる作品群と言えます。読者は読み進むうちに自分の頭の中が秩序立てられ、整理されていく快感を味わうでしょう。これに対し「アイカードブック(icardbook)」は、読者の関心、興味へ開かれた「オープン」の仕掛けを内蔵したひとつのサービス(books as a service)です。スマホなどモバイル端末での情報収集が当たり前になりつつある世界に投じられた、ロゴスとパトスの融合物としての書き物。読者は、自分の探し物の周辺に意外な「知の世界」があることを知る。本と読者との出会い、セレンディピティを演出する、新しい本のカタチです。

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