民衆の既得権益としてのアドル

さらに、神の正義(公正)は「神の共同体」であるウンマ(イスラーム信徒共同体)の成員である一般民衆の正義(公正)観とも深くつながっている。

彼らの生活は神の正義(公正)に沿ったものでなければならず、それは通常、正しい政治のもとでの、慣習あるいは既得権益と意識されていた。

それゆえに、一般民衆にとって、正義(公正)とは彼らの観衆や既得権益が守られている状態であり、不正義(不正)とはこれらが侵害されている状態である。そして、彼らにとって正しく公正な政治とは、正義(公正)な状況を守り、不正義(不正)な状況の場合、これを正義(公正)な状況へと回復させる政治である。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第4章:公正観  加藤博(書籍工房早山、2010年)
「14世紀末-15世紀初頭カイロの食糧暴動」長谷部史彦 『史学雑誌』97編10号、1988年


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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