無視されるイスラーム世界

イスラーム世界は近代の経済史において、「負け組」であった。

それでは、誰に対して「負け組」なのか。もちろん、西欧に対してである。しかし、だからといって、ヨーロッパに対抗する「アジア」の一員でもない。というのも、近年、日本において注目された海のアジア論におけるアジア間貿易(アジア経済圏)の主体として、イスラーム世界は登場しないからである。

つまり、「ヨーロッパ対アジア」の二項対立的な構図のなかに、その中間に位置するイスラーム世界は埋没してしまった。

参考文献:
「世界経済史におけるイスラ-ムの位置」加藤博 『社会経済史学の課題と展望』  社会経済史学会編(有斐閣、2002年)
イスラム世界はなぜ没落したか?―西洋近代と中東』  バーナード・ルイス 臼杵陽監訳(日本評論社、2003年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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