ブローデルの「全体史」

ブローデルは、「時間の三層論」をもとに、従来の政治史中心の歴史学を批判し、新しい歴史学を提唱した。そして、この新しい歴史学を、「全体史」と呼んだ。

彼によれば、歴史学は人間の営みの全体的把握を目指す学問であり、長期の世紀単位でしか変化しない自然環境や人間の心性(社会史)から、半世紀単位を上限として中期のサイクルで変化する経済変動(経済史)、そして日々刻々と短期に変化する政治情勢(政治史)まで、長中短の三層の時間の流れなかで生起するすべての変容、変化を研究テーマにしなければならない、と言うのである。

ブローデルが人間の経済生活を構成するとした物質文明、市場経済、資本主義の三層は、それぞれ、長期、中期、短期の歴史学が対象とする経済生活の領域である。

参考文献:
フェルナン・ブローデル[1902-1985]』  フェルナン・ブローデル 井上幸治編・監訳(新評論、1989年)

■関連知識カード/章説明他:
三層の時間 その1
三層の時間 その2


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック