タウヒードの社会観 4:原則と適用

イスラームの規範は、原則において厳格であり、適用において柔軟である。それは、イスラームの規範すべてが神の啓示に根拠を持つところから、原則において厳格でなければならず、かといって規範の適用においては、多様な現実に対応しなければならないからである。

イスラームは、形式合理的で精緻な弁証術を発達させた。それは、絶対的で無制約的な神の原則と、制約され条件づけられた被造物としての人間の行動との折り合いをつけるためであった(第一巻第5章)。その結果、神と現実の間に、無限に広がる解釈空間が存在することになった。* 

参考文献:
『イスラム世界論 トリックスターとしてのアッラー』 第一部第1章:トリックスターとしてのアッラー  加藤博(東京大学出版会、2002年)

* 現代において、国家や既成宗教権威の規範強制力が低下し、イスラーム法の「自由な」解釈に拍車をかけた。その中で、伝統的な法学派の権威や拘束性を否定する「原理主義的」な法解釈が主流となった。

□参照知識カード:
イスラームで個の欲望と共同体の福祉を橋渡すのは何か
イスラームの弁証術の「護教的」性格


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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