政府の再分配機能(その2)

こうした政府の役割は、資本主義が浸透しその弊害が顕在化する中で拡大していった。世界恐慌(1929年)に対処するために行われたアメリカのニューディール政策や、ゆりかごから墓場へ*というスローガンによって特徴づけられる第二次世界大戦後のイギリスの社会福祉政策はその典型例である。日本でも1961年から国民皆保険制度が始まった。

このように政府の再分配機能は、資本主義による市場の失敗を補完する役割を持っていることがわかるだろう。

参考文献:
福祉政治史―格差に抗するデモクラシー』  田中拓道(勁草書房、2017年)

*ゆりかご、つまり人の誕生、そこから 墓場、つまり人の死まで、すなわち人間の一生を通じてすべての国民の最低限の生活を国家が保障し、生活不安を解消することを意味する、社会保障制度の充実を期すための標語。 この標語は1942年 11月にイギリス政府に提出された「ベバリッジ報告」のなかに現れたものである。具体的には、イギリスにおける大規模な住宅建設、家族手当、統一的な国民保健サービス、国民保険、国民扶助、児童保護などの諸制度を指す。[編集部]

 


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