[おわりに]『人工知能と人工知性』

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◎「人工知能は工学(エンジニアリング)であり、科学(サイエンス)であり、哲学(フィロソフィー)なのである。(三宅陽一郎)

これは、三宅陽一郎(ゲームAI開発者)氏の、『人工知能と人工知性』の「おわりに」を公開したブログ記事です。


おわりに

人工知能は長い間、箱庭に閉じこもって来ました。その誕生から今まで、迷路の中で、将棋の中で、問題に特化して発展して来ました。その発展はしかし、まるごと一個の知能を作ろうとするものではありませんでした。しかし、近年、デジタルゲームの発展により、またロボットの社会的進出のため、自律型の汎用知能が必要とされて来ました。

しかし、長い間、人工知能を包むビジョンは、デカルト的なビジョンでした。合理的、機械的ビジョンです。しかし、それではこの世界を内側から生きる、身体を内側から生きる人工知能を作ることはできません。新しい足場が必要であり、現象学はその大きなヒントです。

現象学は経験から出発します。まず自と他をわかたず、世界と溶け合った超越論的主観の世界から始まります。そこから自己と他者を発見します。このような全体的経験を人工知能にも与えてやる必要があります。そのためにはどうすればいいか、世界の認識と自己の認識の分割を待たない経験を得るために、世界の認識の知識表現に着目します。その知識表現の中に主観性を与えておくのです。つまり知識表現を通して、主観世界と客観世界が溶け合っているのです。

そのようにして知識表現の拡張によって、人工生命ならぬ人工知性を作ることができます。そのような人工知性はどれぐらい人間に近いかは、おそらく人間程ではないでしょう。しかし、人工知能とは、一歩一歩、さまざまな手段を通して、我々の作る知能の質を向上させて行く運動なのです。

 

目次構成:

はじめに

第一章 知能と環世界

第二章 知能ってなんだろう

第三章 ふたつの人工知能の作り方

第四章 人工知能の基本構造

第五章 知能の構造性を解き明かす

第六章 環境認識と行動と人工知能

第七章 運動のための人工知能

第八章 現象学による人工知能概念の再構成へ

第九章 「エージェントアーキテクチャ」と現象学的人工知能

□知識カードの例:(第五章 知能の構造性を解き明かす)~アイカードブック(iCardbook)は知識カードを編成した電子書籍です。

57 テセウスの船
58 物質と情報
59 テセウスの船と人体
60 生物の「存在」の二つの側面
61 人工知能にもふたつの視座が必要
62 反射という知能
63 生物の内的時間
64 知能は生物内部の時間を生きる
65 記憶と自由意思
66 身体のイマージュ
67 可変フレームと知能の序列
68 知能の序列
69 サブサンプション構造
70 生物の行動
71 キャラクターの行動

『<人工知能>と<人工知性>』はアイカードブックの一冊です。

 

■アイカードブック(iCardbook)については、こちらをどうぞ。

アイカードブック創刊の狙い | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/5063

本のネットワーク化 – iCardbook|知の旅人に http://society-zero.com/icard/network

日本人の情報行動の変化と<本>の未来 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/7396/#4

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