神経回路がコンピュータと大きく異なる点として、トップダウン情報処理が大きなウエイトを占め、また多くのゆらぎを含んでいることを述べてきました。
現代は、入出力回路として不完全な脳と、完全なコンピュータが共存している時代です。互いの相補的な機能を活用すれば、完璧な数理計算や記録はコンピュータが担当し、間違いが許される程度の柔軟な記憶や、創造的な活動は脳が担当する、という形での分業が効率的です。
近年では、コンピュータ計算にもゆらぎの要素を加えるという試みもありますが、こうした共存の形を意識した開発が必要になると考えられます。
■参考文献
『進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)』 池谷裕二(講談社、二〇〇七年)
『人工知能のための哲学塾』 三宅陽一郎(ビー・エヌ・エヌ新社、二〇一六年)
『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)』 松尾豊(KADOKAWA/中経出版、二〇一五年)
『脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす (ブルーバックス)』 甘利俊一(講談社、二〇一六年)
★この記事はiCardbook、『脳と情報——神経回路と記憶のメカニズム——』を構成している「知識カード」の一枚です。
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