中東は都市文明の発祥地:高度な都市社会

水は人の生存・生活にとって、不可欠である。モンスーン気候のアジアの住民にとって、水は空気とともにあたりまえに得られる「公共財」である。その水が少ないということは、社会生活の根底に競争原理が組み込まれているということを意味する。* 

このことは逆説的ながら、中東イスラーム世界は、人びとが共存するためのメカニズムを不可欠とする社会だということでもある。貴重な水を有効に利用するためには、住民はまとまって住まなければならず、その結果、人口の都市への集中がもたらされた。中東イスラーム世界は都市文明の発祥地であり、そこでは、高度な都市文化が展開した。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第1章第1節:生態系・地理的立地  加藤博(NTT出版、2005年)

* 中東イスラーム世界は、水のほか、燃料・資材となる資源もまた少ない。20世紀初頭における「市場財」としての石油が発見されるまで、石炭はおろか、燃料源としての木材の供給も限られていた。フェニキア人の船舶の材料となったことで有名なレバノン杉の破壊的な伐採は、このことを象徴している。


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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