イスラーム事業経営における利得と倫理

しかし、それにしても、現実にはリバー相当の利益を得ることでできるとしても、そのために必要な煩雑な法手続きは、商売における取引コストを高める。近代西欧はこの煩雑な法手続きを回避して、商売での取引コストを下げる道を進んだ。

これに対して、イスラーム世界は、商売における利益に倫理上の制約を設けることにこだわった。その結果、イスラーム経済における「同時かつ現物での取引」、つまり等価交換へのこだわりと、将来の不確実性を極力排除するために規定された、精緻でカズイスティック(多義的)な資本と労働の短期的な契約の組み合わせによるイスラーム事業経営が生じることになる。*

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部第9章:イスラム金融の文明史的意味  加藤博(書籍工房早山、2010年)

* イスラーム事業体の再評価については、第2巻『歴史編』を参照。

□参照知識カード:
イスラーム事業体への評価
小さな組織・ネットワークによる信用・短期的投資


★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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