情報ゲームをベースにした市場社会

マクリーズィーが描くのは、高い経済の波及効果が観察される市場社会、それも、貨幣が実物経済とは独立した変数として経済に影響を与える、まさに貨幣的経済そのものである。

この経済危機の原因である銅貨の氾濫に対するマクリーズィーの処方箋は、卑金属の銅ではなく、貴金属の金をふたたび取引の基礎に据えることである。この意味において、マクリーズィーは伝統的なイスラーム法学者の見解を踏襲している。

しかし、この処方箋を述べる前の銅貨の氾濫についての流通貨幣量と相対価格の分析に関する限り、それは、物価水準を流通貨幣量との関係から考察しており、近代経済学での数量貨幣説の見解に近い。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第6章:統治術としての貨幣政策  加藤博(書籍工房早山、2010年)
「イスラムの経済思想」加藤博 『経済思想11 非西欧圏の経済学―土着・伝統的経済思想とその変容』   八木紀一郎編(日本経済評論社、2008年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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