イスラーム的国家的所有理念

イスラーム世界には、農地の国家的所有制度があった。それは一言で述べれば、農地の「所有権」はあくまでも国家にあり、農民は、納税の義務を果たす限りにおいて認められた、「用益権」を行使できるだけであるとする原則である。

その起源は、ウマイヤ朝の第8代カリフ、ウマル二世(統治 718~720年)が打ち出したファイ(不動産の戦利品)理論にさかのぼるとされる。戦利品の不動産の所有権はウンマ(イスラーム信徒共同体)、実質的には国家にあるとする理論である。

ウマル二世は、それまで税制上の特権を得ていたマワーリー(非アラブ・イスラーム教徒)、さらには征服軍の主体で徴税を免除されていたアラブからも通常のハラージュ(地租)を徴収する目的から、この理論を打ち出した。

参考文献:
イスラムの国家と社会(世界歴史叢書)』  嶋田襄平(岩波書店、1977年)
初期イスラーム国家の研究』  嶋田襄平(中央大学学術図書、1996年)


 

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