ファイ(不動産の戦利品)理論によれば、アラブ軍の征服地はイスラーム教徒全体に属する不可分の土地財産としてのファイ*1 であるとし、これを用益する者は、たとえアラブ・イスラーム教徒であっても、地代としてのハラージュを国家に納めることとされた。
こうして、農地のほとんどは国有地(ミーリー)とされた。中世において、軍事奉仕の代償に与えられたイクター*2 は封土と訳されることがあるが、この場合でも、法理論のうえでは、与えられたのは土地の用益であった。
参考文献:
『イスラムの国家と社会(世界歴史叢書)』 嶋田襄平(岩波書店、1977年)
『初期イスラーム国家の研究』 嶋田襄平(中央大学学術図書、1996年)
『中世イスラム国家とアラブ社会―イクタ-制の研究』 佐藤次高(山川出版社、1986年)
*1 戦利品を意味するアラビア語。従軍戦士の間に分配されない、つまりイスラーム教徒全体の所有に帰す土地、その他をさした。
*2 カリフやスルタンから分与された土地や村落、あるいは徴税権を意味するアラビア語。本来は、軍事奉仕の代償として、給与(アター)に代わるものとして与えられた。
■関連知識カード/章説明他:
マンファア(用益権)は実質的な所有権
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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