ワクフの改築とイスラーム法

シンガポールでは、こうした老朽化したワクフ物件を改築することで、物件の収益性の向上をめざした。それによって、ワクフ設定者が決めていた受益者へのお金の流れを復活させようとしたのである。

イスラーム法では、もともとワクフ物件の改築は認められていない。ワクフ設定者の意図を歪めるおそれがあるからである。しかし、シンガポールでは、ワクフ設定者が決めた受益者の利益が増進するならば、改築を認めるという法解釈の変更を行い、それによってワクフの再生が実現したのである。

参考文献:
「現代イスラーム経済の挑戦―ポスト資本主義時代の新たなパラダイムのために」長岡慎介 『秩序の砂塵化を超えて―環太平洋パラダイムの可能性』221-248頁、  村上勇介・帯谷知可編(京都大学学術出版会、2017年)
Shinsuke Nagaoka “Revitalization of Waqf in Singapore: Regional Path Dependency of the New Horizons,” Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 8, pp. 4-18, 2016. https://www.semanticscholar.org/paper/Revitalization-of-Waqf-in-Singapore%3A-Regional-Path-Nagaoka/88c49b70261c9a09ef9f31ee4078e05df790582d

 

 


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